少なくとも母親の家の連絡先を、ロウエルは知っていたはずなのだ。
ロウエルはあえて口を閉ざしていた?
「うーん、でも手紙出しても何の返答もなかった相手だろ?」
「それに、警察も伯母様の携帯に入ってた電話番号にかけてみたわけでしょ? それに対してきっと無下に切っちゃったのよ、うちの連中ならやりそうなことよ」
拳を握りしめて千恵美は悔しげに言った。
「身元不明の日本人夫婦、ってんじゃわからねぇかもな。うちの親とか、ああゆう能天気なやつらだから、そのうちひょっこり戻ってくるさ、くらい楽観的に考えてて、第一まさか日本にいないなんて、考えてもいなかったんだぜ?」
はあ、と純が当時を思いはせるように言ったその時、千恵美の携帯が鳴った。
「何? あたしもう東京に戻るから」
千恵美は相手が誰か確かめると、つっけんどんな言葉で電話に出た。
「……いるわよ。え? ………わかった。亜矢の店にいる」
眉間に皺を寄せて、千恵美は携帯を切った。
「お母さんよ。何か、ケンに大事な話があるっていうから、少しだけつき合ってあげて」
それを聞いて、ケンはほっとした。
本当はもう少し、話をしてみたかった。
母の面影を真美から探したかたったのかも知れない。
手紙のことで、純と千恵美は各々の憶測を口にしていたが、ややあって、ドアが開いた。
「先ほどは父が失礼致しました」
凛としたたたずまいで真美はケンにしっかと頭を下げた。
「どうぞ」
千恵美が窓の方に寄ると、真美はそこに座った。
「あなたが姉の子供だと言うことはすぐにわかりました。ほんとによく似てるから」
そう言うと、真美は目頭を押さえた。
「母も生きていたら、あなたのような感じだったのかと思って、逢えてよかった」
純が通訳してくれた真美の言葉に、ケンは微笑んだ。
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