東京へ行こう -ハンスとケン- 68

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 若い時に国を出ざるを得なかったから、ああなったのか、それともああいうやつだから国を出たのか。
 おそらく後者だろうな。
 確かに、根っから人間が自由にできてるようなやつで、才知や容姿だけでなく、性格も悪くないときてる。
 色恋めいた話題ばかりが取り上げられるようだが、あれで結構男気があるから友達も多い。
 ほんとに意図せずして誰をも魅了するからたちが悪い。
 あいつに魅入られた哀れな被害者はハンスだけではないだろうな。
 このままもし、ハンスとつき合ったとしても、いずれブリュンヒルデと同じ台詞を口にすることになる気がする。
 たまたまアレクセイの近くにいたのが俺で、たまたま俺はメグに振られて落ち込んでいたから、何となくああなってしまっただけで。
 またメグの時のようなダメージを被ることがわかっていてつき合うって、どうなんだよ。
 ケンは散々あれこれ考えてから、首を振り、考えるのをやめた。
「ケン、ね、大丈夫?」
 また考え込んでいたケンは千恵美に心配されて失笑する。
「ああ、そろそろお開きにしようか、十時過ぎたし、レジ教えてくれる?」
「わかった」
 まだみんな、主にロジァや享が中心に盛り上がっているようだったが、ケンは千恵美と一緒に部屋を出た。
「たった五日ほどだったけど、随分な時間を過ごした気がする」
 部屋に戻る廊下でケンが言った。
「来てよかったでしょ?」
 千恵美は当然というように、ケンを見上げた。
「もちろん。出会った人もわかったこともたくさんあったし」
「よかった。今度はゆっくり遊びに来てね」
「ああ。次は純と一緒にニューヨークにおいで」
「絶対行く。化粧室寄っていくね」
 千恵美がトイレに向かうと、ケンは部屋に戻って、そろそろお開きにすると告げた。
「じゃあ、ちょっと俺の部屋に寄って飲まないか? もちろん、ティーンエージャーはお茶だよな」
 ハンスが提案した。


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