ハンスは帝都ホテルを日本での定宿にしていたし、アレクセイとロジァもどうせならケンの部屋に泊まればいいものを別の部屋を取ったらしい。
当然のようにスイートだ。
ケンの部屋とアレクセイたちの部屋はタワー館にあったが、ハンスの部屋はインペリアルフロアにあった。
「わあ、きれい!」
リビングの窓からは銀座の夜景が一望できる。
千恵美はうっとりと窓辺に立った。
「さっき用意してもらっておいたんだ」
テーブルにはチーズの盛り合わせや苺やマンゴーなどの盛り合わせの皿とともにワインやコニャック、それにきれいに磨かれたグラスが置いてある。
別のテーブルには、今しがたティーセットと色んな種類のケーキが運ばれたところだ。
「冷蔵庫にアイスクリームもあるよ」
「きゃあ、嬉しい! じゃ、ケーキからいただこうっと」
千恵美はハンスに勧められて早速ケーキを皿に取った。
「享もどうぞ」
アレクセイが慣れた手つきでお茶をカップに注いでいた。
「すんません」
享はおずおずとアレクセイからお茶を受け取った。
「純はお茶? それとも酒のがいい?」
「俺もお茶がいい」
「ロジァ、お前はアイスクリームか?」
「うっせ、お茶!」
アレクセイにふくれ面を向けながらお茶を受け取ったロジァは、ソファにどっかと腰を降ろした。
「なあ、あと一日くらい帰るの伸ばそうぜ」
お茶をゴクンと飲むと、ロジァがダダコネのように喚いた。
「残念だな、楽しい仕事がお前を待ってる」
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