「ちぇ、待ってるのはクソジジィだろ? あ、何か考えたら、この辺が痛くなってきた」
テーブルにカップを置いたロジァは、胸の辺りをかきむしる。
「え、大丈夫? ロジァ」
千恵美や純が振り返った。
「気にしなくていい。ロジァの病名は“ワガママ”って書く」
ロジァに睨みつけられながらアレクセイが言った。
「てめ、いつからクソジジィの手先になった!」
悪態をつくロジァを見て、千恵美がフフフと笑う。
「パリで目いっぱい羽を伸ばしてきたんじゃないのか? ロジァ。俺もお茶にしよう」
ケンは言った。
「結構、うまいコニャックみたいだぜ? これ」
アレクセイはボトルを取り上げた。
「今夜はちょっと疲れたから」
「OK」
お茶を受け取ったケンがロジァの向かいに腰を降ろすと、アレクセイは二つのグラスにコニャックを注いだ。
「ハンス」
窓際にぼんやり立っていたハンスは、アレクセイに呼ばれてやってきた。
「うん、なかなか」
アレクセイとグラスを合わせたハンスは琥珀色の液体を口に含んで頷いた。
「それで? ケン、日本に来た成果はあったのか?」
「かなり」
「へえ?」
アレクセイが目で続けろと促した。
「父親の実家、岡本家では滅茶歓待してくれたし、ちょっとしたお互いの誤解も解けた。情に厚い、優しい家族だ」
正月には雑煮を食べ、神社に初詣に行ったことや、ケンは岡本家で過ごした体験をかいつまんで話した。
「昨日は千恵美と純と一緒に、母の実家に行った。名古屋に行くとき新幹線に乗ったんだが、富士山がすごくきれいに見えた」
「そいつはラッキーだったな。俺はまだ富士山を見たことがない」
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