「叔母の真美、千恵美の母だが、彼女と会って、そのことも確かめた。おそらく父は深い傷を負ったんだと思う。手紙を出しても裕子の手には渡らず、裕子に裏切られたと思ったんじゃないかと」
ケンの思いはまた亡き父、ロウエルへと馳せる。
「へえ、あの堅物のジジイにも、そんなロマンスがあったと」
ロジァの言葉に、ケンは苦笑する。
「ロウエルの手紙によると、母はニューヨークに来る前にロウエルと手紙でやり取りし、裕子のことを知らせてロウエルの誤解を解いて、ニューヨークで逢う約束をしていたらしい」
ケンはそこで少し言葉を切った。
「多分、逢えなかったんじゃないか」
事件のことを知った時、ロウエルもショックだったはずだ。
だから二人の墓を建て、ケンを引き取ったのだ。
ただ、倉本家に連絡を入れてみたが応対してもらえなかったということもあったかもしれない。
だが……
「何故、ロウエルはケンに恋人の縁者だということを話さなかったのか」
ケンの心の中を見透かしたようにアレクセイが呟いた。
「無理やりミステリーにしないでくださいよ」
アレクセイに抗議したのは純だった。
「あれれ」
後ろに突っ立っている純をアレクセイは見上げた。
「今、一瞬ドッペルゲンガーかと思った、ケンの」
「科学者とは思えない発言ですよ」
「ほら、可愛い顔して、サラリときついこと言ってくれるし、まるでケンそのもの」
「お前って、ほんとしあわせなやつだな」
笑っているアレクセイにケンは呆れた顔を向けた。
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