千恵美はちょっと目を潤ませていた。
「ああ、真美さんによろしく」
三人を見送ったあと、ケンはちょっとぼんやり突っ立っていた。
「ケン」
ロジァが呼んだ。
部屋がある場所が違うため、ハンスとはロビーで別れ、ケンとアレクセイ、ロジァは少し歩いて別のエレベーターに乗り込んだ。
一階下の階でエレベーターを降りる時、アレクセイはケンを振り返った。
何か言いたそうな顔をしていたが、ケンはお休みと言った。
自分の部屋に戻ると、ケンはふうっと大きく息をついた。
何をする気にもなれず、そのまましばらくベッドに寝転がった。
「なんか……疲れた……そういえば、タクシー代もハンスに払わせたみたいなのに、まだ礼も言ってないな」
普通に会話がしたいけど、何となくぎくしゃくしている。
明日のフライト、ちょっと気が重いかも。
そんなことを考えながらうとうとしたケンだが、はたと起き上がると、シャワーを浴びてバスローグのまま窓辺に立った。
日本での最後の夜か。
しみじみ東京の夜景をみたケンは、ちょっとした感傷に浸りつつベッドに入った。
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