「そうそう。俺んち、親父は親父ってだけで家族じゃねーもん」
パソコンのキーボードを叩いていたロジァもそんなことを言う。
そういえば、倉本家では目いっぱい胡散臭がられたっけ。
「なるほど、色々なパターンがあるってことか」
「でも、思い切って行ってよかったんだろ?」
ハンスは笑みを浮かべた。
「そうだね。行ってよかった」
ケンも微笑んだ。
後は、自分の席で本を読んだり、パソコンに向かったり、それぞれやりたいように寛いでいるうちに、気が付くとやがて目に馴染んだニューヨークの空が見えてきた。
例によってリムジンでJFKから市内に入ると、ハンスは三人を食事に誘った。
ロジァの提案で、いつものグリルに立ち寄って、ベーグルサンドやコーヒーの夕食となった。
店内の喧騒に浸っていると、ケンは帰ってきたのだと実感が湧いた。
仕事で海外を飛び回ることは多いのだが、今回の日本への旅行は少し特別なものになった。
ロジァはビールが飲みたいと喚いたが、ケンは三人にはワインやビール、ロジァにだけコーヒーをオーダーしたため、ぶすくれながらロジァはガツガツとベーグルサンドを平らげた。
土産はそれぞれに渡したし、ハンスがリムジンで送ってくれたお蔭で、マディソンスクエアにあるアレクセイのマンションの前でロジァとアレクセイを降ろしたあと、ケンは身軽に自宅玄関まで帰ってこられた。
早速走ってきて、逢いたかったとしきりにアピールするジョーを抱きしめているうち、マットもやってきた。
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