不思議そうにマジマジと見つめられてケンは、どう説明したらいいかわからず戸惑っていた。
「ちょっと、信道、うちの店先で何騒いでんのよ!」
その時ドアが開いて、出てきた女性が少年に言った。
そしてケンを振り返り、「やだ、純じゃない、あんたここで何やってんの? そんな恰好して、どうしたのよ、その高そうなコート!」と捲し立てた。
「や、違うって、純じゃないって」
信道と呼ばれた少年が言った。
「純じゃないって、どういうことよ、純じゃなかったら誰だってのよ! とにかく、こんなとこに突っ立ってられたら困るわよ、とっとと中入ってよ」
そこへ店から客らしき女性と一緒に奥からカウンターの中にいた男が出てきた。
「ありがとうございました!」
客を送り出した男は、三人に向き直ると「何やってんだよ、店先で」と顰めつらで言ったが、ケンを見るとにやっと笑う。
「おう、純、なんでぇ、その恰好は。お前にしちゃ珍しくしゃんとしてんじゃねぇか」
「だから、おっちゃん、この人、純じゃねぇって」
信道が言った。
「ああ? ノブ、お前、ついにアタマおかしくなったんじゃあるまいな」
だが、そこへまた「何やってんだ、店先で」と同じような台詞が飛んだ。
「純!!!」
声を合わせたように男と女性と信道がその台詞の主を見た。
ケンが振り返ると、皮のジャケットにジーンズ、スニーカーという、まるでロジァのようないでたちの少年が立っていた。
「え……誰? お前………」
ぎょっとしたようにケンを見つめ、少年は言った。
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