東京へ行こう -ハンスとケン- 83

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 帰りがけ、ちょっとつき合え、とアレクセイに強制連行されたケンは、ベーグルバーガーを齧りながら、ビールを飲んだ。
 カテリーナはいつものごとくとっとと局をあとにし、ロジァは約束があるとかで早々にバイクで帰ったようだ。
「あの古ダヌキ、人を何だと思ってやがる!」
「お前までロジァみたいなこと言ってんなよ」
 古ダヌキこと宇宙局局長はロジァの父親でもあるが、いつもは敵対心を露わにするロジァを宥める側にいるのがアレクセイなのだ。
「お嬢ちゃんや坊やは今日一緒じゃないのか」
 カウンターから声をかけられる。
「ガキにはガキの予定があるんだぜ、サム」
「カテリーナは二十歳だ。ガキとか失礼だろ」
 ケンはアレクセイの発言に反論する。
「中身の問題。サム、お変わり」
「そういうお前こそガキみたいだ」
 サムがウォッカを注いだグラスをアレクセイの前に置いた。
 しばらくベッカーがどうとかエッシャーがどうとか、フランスから来たドクター・オージェにはどうやらひどく嫌われているとか、アレクセイはしばらくどうでもいいような話を続けていた。
 ケンは仕事中は何も考えられないくらい集中せざるを得なかったのだが、こうしてふっと息を吐くと、何かの拍子にハンスのことが頭をよぎり、アレクセイの戯言も耳からすり抜けていく。
 やっぱりハンスとはきちんと話すべきだろうと、そのくらいの礼儀は当然だと思うのだが、いつ、どうやって切り出せばいいか、とぐずぐず考えてしまう自分が嫌になった。
 心ここにあらずでようやくケンが食べ終わった頃、そろそろ出るかとスツールを降りた。
 店を出るとアレクセイはタクシーを拾い、ケンを先に乗せて自分も乗り込んだ。
 屋敷の門の前まで来ると、アレクセイはさっさと料金を払ってタクシーを降りた。


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