仮に彼女とハンスが仕事を超えて歩み寄ったからといって、今更動揺するってなんだよ!
ケンは自分を叱咤した。
ダメだ。
こんなことくらいで、今日一日ぼんやり過ごしてしまった。
特別な仕事がないからといって、自分の仕事はあったのだがどうにも手に着かなかった。
ダメだ、こんなんじゃ………。
誰かのことで頭がいっぱいになって何もできなくなるなんて、今までになかったことだ。
メグと付き合っていた時も、別れを言い渡されたてからも、精神が疲弊して落ち込んだし、きつかった。
だが、こんな、仕事が手に着かなくなるようなことはなかった。
ダメだ………、このままじゃ……。
はっきりしないからだ。
きちんとハンスに合って話そう。
何とか友達としてこれからもつきあっていければ………。
そんなことを考えて、何となくマンハッタンまで来てしまったのだが、さっきの二人の残像を振り払うように首を振る。
友達って……
次にハンスと会ったとして、今度付き合うことになった彼女だとか紹介されたら、俺、どうすんだろ………。
いや、再婚だって当然考えられるわけで………。
二人を祝福とか、ちょっと無理だろ。
ってことは友達っていっても、当分は会えないな……。
少なくとも俺にも恋人と呼べるような誰かができるとか、じゃなきゃ。
顔を上げると地下鉄がホームに停まってドアが開き、どっと人が降りてまた乗ってきた。
ドアが閉まり、窓越しに見た駅名はあまりよく知らなかった。
そしてようやく乗り過ごしたことに気づいた。
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