東京へ行こう -ハンスとケン- 88

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 仮に彼女とハンスが仕事を超えて歩み寄ったからといって、今更動揺するってなんだよ!
 ケンは自分を叱咤した。
 ダメだ。
 こんなことくらいで、今日一日ぼんやり過ごしてしまった。
 特別な仕事がないからといって、自分の仕事はあったのだがどうにも手に着かなかった。
 ダメだ、こんなんじゃ………。
 誰かのことで頭がいっぱいになって何もできなくなるなんて、今までになかったことだ。
 メグと付き合っていた時も、別れを言い渡されたてからも、精神が疲弊して落ち込んだし、きつかった。
 だが、こんな、仕事が手に着かなくなるようなことはなかった。
 ダメだ………、このままじゃ……。
 はっきりしないからだ。
 きちんとハンスに合って話そう。
 何とか友達としてこれからもつきあっていければ………。
 そんなことを考えて、何となくマンハッタンまで来てしまったのだが、さっきの二人の残像を振り払うように首を振る。
 友達って……
 次にハンスと会ったとして、今度付き合うことになった彼女だとか紹介されたら、俺、どうすんだろ………。
 いや、再婚だって当然考えられるわけで………。
 二人を祝福とか、ちょっと無理だろ。
 ってことは友達っていっても、当分は会えないな……。
 少なくとも俺にも恋人と呼べるような誰かができるとか、じゃなきゃ。
 顔を上げると地下鉄がホームに停まってドアが開き、どっと人が降りてまた乗ってきた。
 ドアが閉まり、窓越しに見た駅名はあまりよく知らなかった。
 そしてようやく乗り過ごしたことに気づいた。


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