ほんとに何やってるんだか………。
次の駅で降りたケンは、向かいのホームに渡り、ちょうど来た電車に乗り替えた。
見覚えのある駅をいくつか過ぎて、やがて自分の降りる駅でドアが開いた。
階段を上がり、トボトボといつもの道を歩く。
街灯に照らされて雪と雪の影が足元にチラついていた。
アレクセイを愛していたとしてもハンスは割り切ってブリュンヒルデと結婚したわけで。
もし、ブリュンヒルデが離婚を言い出さなければ、ハンスの結婚生活は続いていて、あの、天使みたいな子供たちの父親として、夫として幸せな家庭を築いていたはずだし。
ケンはマイナスの理由を心の中で並べ立てた。
もし、今ハンスと付き合うことになったとしても、いずれはああいう人種はどこぞのご令嬢と再婚てことになるだろうし。
そういう未来をわかっていながら深みにはまってしまったら、ちょっと立ち直れそうにない。
「どこぞの誰かと……」
唇に言葉を乗せた途端、足元から底なしの闇へと落ちていくような気がした。
あんな風にキスしたり抱きしめたり、すべてを包み込んでくれるような優しい笑顔を、ハンスは誰に向けるのだろう。
脳裏にはまたさっきの女性をエスコートしていたハンスが舞い戻る。
しばし動くこともできずにケンは立ち止まった。
胸が捻じれるようにキリキリと痛む。
しばらくそうして立ち竦んでいたケンだが、ようやく深呼吸をするとまた一歩踏み出した。
「雪だるまになっちまう……」
ただ錘でもついているかのように足が重い。
とにかく歩くしかない。
雪が少しずつ降り積もっていく家路を、俯きがちにケンはまたトボトボと歩き出した。
やっと門が見えてきた。
しかし門に近づいたところで、ケンはまた立ち竦んだ。
門に凭れて人影があった。
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