東京へ行こう -ハンスとケン- 91

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 人が来るとわかっていたら、携帯から操作してセントラルヒーティングを入れておいたのだがと、どうでもいいことを考えながら、キッチンでコーヒーを淹れ、温めたハンバーガーを取り出して、トレーに乗せてリビングに向かう。
 ケンがリビングに入ると、所在なさげに立っていたハンスが振り返った。
 一瞬目が合い、ケンはさりげなく逸らした。
「急に来て悪かったね」
「いや……適当に座って」
「食事は?」
「まだだけど」
「じゃあ、ちょうどよかった。一緒に食べよう」
 ようやくハンスはソファに腰を降ろした。
 ケンはハンスにハンバーガーとコーヒーを渡し、自分も向かいに座った。
 ハンスがハンバーガーにかぶりつくと、ケンも俄かに空腹を覚えてしばらく二人とも黙々と食べていた。
 ハンスはよほど腹が減っていたのだろう、あっという間に平らげてしまい、コーヒーをごくごく飲んだ。
「はあ、生き返った」
 ケンはつい笑わずにいられなかった。
「あんな雪の中に突っ立ってたら、本気で凍りついちまうよ」
「いや、電話してからとも思ったんだが、何となく、電話より逢いたくなった」
 その台詞はまたケンを熱くした。
 だが、それに何と答えていいかわからないケンは、ハンバーガーを食べ終えてコーヒーを飲むと立ち上がった。
「ジョーの散歩に行ってこないと」
「じゃあ、俺も一緒にいいか?」
「いいけど、その靴じゃちょっとな」
「なーに、平気さ」
 スニーカーに履き替え、散歩グッズを手にすると、ジョーがいそいそとケンに続いた。


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