人が来るとわかっていたら、携帯から操作してセントラルヒーティングを入れておいたのだがと、どうでもいいことを考えながら、キッチンでコーヒーを淹れ、温めたハンバーガーを取り出して、トレーに乗せてリビングに向かう。
ケンがリビングに入ると、所在なさげに立っていたハンスが振り返った。
一瞬目が合い、ケンはさりげなく逸らした。
「急に来て悪かったね」
「いや……適当に座って」
「食事は?」
「まだだけど」
「じゃあ、ちょうどよかった。一緒に食べよう」
ようやくハンスはソファに腰を降ろした。
ケンはハンスにハンバーガーとコーヒーを渡し、自分も向かいに座った。
ハンスがハンバーガーにかぶりつくと、ケンも俄かに空腹を覚えてしばらく二人とも黙々と食べていた。
ハンスはよほど腹が減っていたのだろう、あっという間に平らげてしまい、コーヒーをごくごく飲んだ。
「はあ、生き返った」
ケンはつい笑わずにいられなかった。
「あんな雪の中に突っ立ってたら、本気で凍りついちまうよ」
「いや、電話してからとも思ったんだが、何となく、電話より逢いたくなった」
その台詞はまたケンを熱くした。
だが、それに何と答えていいかわからないケンは、ハンバーガーを食べ終えてコーヒーを飲むと立ち上がった。
「ジョーの散歩に行ってこないと」
「じゃあ、俺も一緒にいいか?」
「いいけど、その靴じゃちょっとな」
「なーに、平気さ」
スニーカーに履き替え、散歩グッズを手にすると、ジョーがいそいそとケンに続いた。
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