「そんなことを考えていたのか?」
そういうとハンスはふっと笑う。
「アレクセイのこと妬いてくれてるのなら俺は却ってうれしいけど」
カッと頭や顔が熱くなったケンに、ソファに膝をついてハンスはにじり寄った。
「華やかなあいつが羨ましいとか、あいつと比べるとか、そんなこと考えてるわけじゃないじゃない、俺はただ人間の思いなんかどうこうすることなんかできないって……」
「その通りさ、だから言っただろう、超高速でケンにいかれてしまったんだ、アレクセイとか誰とか、もうそんな次元じゃないんだ」
そう言ったかと思うと、ハンスはケンをソファに押し倒していた。
「え…ハンス……!」
少し抵抗したものの、狂おしいような口づけにケンは次第に思考力も力も奪われた。
だが、そのうちハンスの手がケンのセーターの中に入り込み、ズボンのベルトにもう片方の手がかかった時、ケンは「ダメ!……ちょ、ハンス、ここじゃ………」と必死に声を上げた。
ハンスがようやく手を止めたのは、すぐ近くでウウウという唸り声を耳にしたからだ。
ジョーが今にも飛び掛かりそうな顔でハンスを見ている。
「ジョー! いい子だ。遊んでただけだから、な」
ケンは起き上り、ジョーを引き寄せて撫でた。
「いい子だ、ジョー」
「恋敵はジョーだったのか」
ハンスはやれやれと苦笑した。
「だからここじゃダメだって……」
「秋に泊まった部屋ならいいんだな?」
ケンは顔を赤らめた。
とっくに身体の奥に灯された火が燻っている。
「おいで」
ハンスはケンの手を掴み、リビングを出てすぐの階段を上がる。
ケンはついて来ようとするジョーを振り返った。
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