東京へ行こう -ハンスとケン- 98

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「そういえばまだ聞いてなかったな、日本でのルーツ探しの結果はどうだった?」
「よかったよ、行って。俺にとってルーツが何かってこともちゃんとわかった」
「日本で家族に会えたから?」
「うん、それも確かに大切なことだけど、俺のルーツってここだったんだ」
「ここ?」
「そう。ロウエルの父が愛してくれて、こうしてそれを引き継いだ俺がいるってこと。血筋とか関係なく、それが俺のルーツだって」
「そうか」
 ハンスはいつもの柔らかい笑みを浮かべてケンを見つめた。
「よかったな」
「それより、ゲミンゲンが迎えに来るまでにちゃんと支度しておかないと」
「あーあ、つまんねーの」
「大企業の上に立つ男が言う台詞じゃない」
「俺はただの男だよ」
 クスリとケンは笑う。
 知っている。
 仕事となれば顔も変わる。
 でも、今日が休みだったらと、ほんのちょっと思わないでもないケンだった。
                             おわり


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