ペルセウスへ2

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「しかし、法律家って弁護士とか、検事とか? 国家試験もあるし、なれるかどうかなんてわかんないっしょ?」
 磐田はしつこく食い下がる。
「いや、在学中に司法試験パスする予定なんで」
「お、すごい意気込み、大学ってどこだっけ?」
 ニヤニヤと聞いてくる磐田に、坂本はすまして「T大ですけど」と言う。
「え? え?」
 予想外という反応に、今度はさすがに磐田も諦めただろうという坂本の思惑を凌駕して、磐田は歩き出した坂本の前に立ちふさがって、坂本を見上げた。
「ウソ? T大って、あのT大?」
「ウソなんか言ってませんけど」
 坂本は冷ややかな目を磐田に向けた。
「T大生ってだけでも今業界じゃもてはやされるんだ。高身長のモデル体型に加え、塩イケメンだけならいくらもいるが、それこそT大生なら君、最強のウリになること間違いなしだよ!」
 唾を飛ばし気味に力説する磐田を今度は見下したように見た。
「残念ながら俺、クイズとかはてんでダメなんで、じゃ」
 踵を返して歩き出した坂本をまたしても慌てて磐田は追いかけてきた。
「誰が君にクイズなんかやらせたりするもんか」
「悪いけど」
 往生際が悪い磐田を振り切った坂本だったが、今回ピンチヒッターを頼んできた幸田監督にOKした後で言われた。
「未来企画に入るんだって? 磐田さんが龍成のことをべた褒めしてたぞ」
「はあ? 入りませんよ。ああ、磐田ってあのしつこい人? 冗談じゃない」
 坂本は寝耳に水なことを言われて、ついイラついた。
「何だ、そうなのか。まあ、とにかく頼むわ」
 幸田監督はサラリと受け流した。
 坂本が前からバイトでやっている雑誌のモデルの仕事は、アパレルの社長山本氏が母親の知人で、幼い頃からよく知っている山本にそれこそモデルが倒れたとかでピンチヒッターで頼まれて始めた。
 幸田は山本の大学時代の友人という繋がりで、業界人にありがちな偉そうな物言いとはかけ離れた飄々とした男で、坂本と同じ目線で話ができる雰囲気だったので、エキストラの仕事も気軽に引き受けたのだ。
「おー、来た来た、龍成!」
 スタジオに顔を覗かせると、すぐに幸田監督が坂本を見つけて大きな声で手招きした。
「こんにちは、お世話になります」
 一応型通りの挨拶をするが、愛想笑いなどすることもない。
 仲間、友人、知人、それ以外と、坂本の中ではきっちり線引きしている。
「実はさ、こないだのキャンパスでのシーン、プロデューサーが見て、こいつに科白やれってさ。龍成、メチャ目立ってたからさ」
 龍成、と幸田監督と同じように呼ぶこの男は、脚本家の関という。
 坂本の嫌いなチャラい系業界人だ。
「科白って、俺が俳優みたいなマネできるわけないでしょう」
 きっぱり断ったつもりだったが、関は怯まない。
「あれ、だって龍成、未来企画に入るんだろ?」
「それもお断りしました」

 


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