高校最後の三学期が始まった。
といってももうセンター試験が終われば一月下旬頃から本格的に入試が始まるし、三年生がまともに登校するのは一月末くらいまでで、二月に入ると推薦で進学が決まっていたり、就職が決まった生徒は当然登校する必要もなく、補講を受ける生徒以外受験生は自主登校となり、ほとんどの生徒が顔を見せなくなる。
そしてあっという間にセンター試験の日はやってくる。
佑人だけでなく、力も志望校の一つがセンター試験の英語と数学が必須となっているため午前中の試験が終わってから試験会場に現れた力を見かけた同級生はちょっと驚いた顔をした。
当然力の志望校を知らないクラスメイトも不思議そうな顔をしたが、佑人と一緒に現れた力に声をかけてきたのは常日頃と変わらないテンションの坂本くらいだった。
「あれ、お前もいたっけ? ってかお前、受けるなんて言ってなかっただろ」
「お前に言う必要がどこにある」
「まさかお前もT大受けるってわけじゃ……」
「お前はバカか」
奇妙なやりとりに耳を澄ませている余裕は他の受験生にはない。煩そうな眼を向けられて三人はさすがに浮いている。
「あ、お昼うちの母がお弁当作ってくれたから、坂本も一緒に食べようよ」
「うわ、食べる食べる!」
坂本と弁当を持った佑人は力の席までやってきてランチタイムとなったのだが、何となくやはりガタイが大きく鋭い目つきの力の雰囲気に周りが引いたのか、三人を遠巻きにしている。
「すっげ、巻き寿司!」
母の美月はたまたまドラマの収録が終わったばかりだったので、佑人の試験に合わせて休みを取り、お友達の分もと張り切って、三段重ねの重箱に巻きずし、卵焼きにから揚げ、トマトやキュウリのサラダと豪華な弁当を佑人に持たせてくれたが、高校生男子三人でかかればあっという間に空になった。
「な、な、卒業旅行、どこにする?」
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