本気で驚いているようすの加藤に力は呆れた顔を向ける。
「そりゃお前、受験生を煽ってポジティブにさせるのが教師の任務だろうが。しかし、そりゃまた、青天の霹靂ってのはこのことだな、で、どっち受かったんだ? S大か? Y大か?」
加藤のテンションはまだ下がらない。
「いや、一応どっちも受かったけど、俺はY大よりS大のが……」
「なにぃいいい? どっちも受かっただと?!」
またしても力の言葉を遮って、今度はストンと椅子に腰を下ろした加藤は脱力したように首を振った。
「いやいや、めでたい話じゃないか。お前らがまさかうちの進学率をあげてくれるとは」
「ちぇ、何だよ、そりゃ」
さすがに力も苦笑いしか出てこない。
「奇跡としか言いようがないぞ、今の三年、何せT大が二人に……」
「あの、センセ」
ハイ、と今まで二人のやり取りを黙って眺めていた甲本が控えめな挙手をした。
「ん?」
「どこでも受かったって話なら、俺も」
「あ?」
甲本を見上げる加藤の目が点になる。
「今年はテスト受験ってなつもりで軽ぅくいくつか受けてんだけど、M大医学部今日発表みたら引っかかっててさ、親に言ったら、お前を合格させてくれる奇特なガッコなんか他にないから、いいとこ狙って浪人なんかするよりそこへ行けとかって」
加藤が口を開いたのはややあってからだった。
「……ったくお前ら、俺を担いでるんじゃないだろうな? 軽ぅく医学部受かっただと? あり得ない、お前が軽ぅく医学部受かるとか……」
「だからさ、軽ぅくは受けるにかかってるんで。まさか裏口とかってのはねぇと思うけどM大受けるとか親には言ってなかったし、親もあり得ねぇとかって言いやがって、最初てんで信じねぇし」
にほんブログ村
いつもありがとうございます