自分が呼ばれているらしいと、佑人はドア口にやってきた。
「あ、えっと東山の妹さん?」
ぱあっと美沙の笑顔が少し紅潮する。
「覚えていていただいて光栄です! あの、これ、お兄ちゃんを合格させてくださったお礼です!」
両手で可愛いラッピングのチョコレートを掲げるように差し出され、佑人は受け取らないわけにはいかなかった。
「いや、合格したのは東山だから。でも、ありがとう、わざわざ」
「いえ、ほんとにありがとうございました!」
九〇度ほども頭を下げてお辞儀をしたかと思うと、美沙は慌てて走り去った。
「お兄ちゃんを合格させてくれたお礼とは、言いようもあったよな、佑人くん、モテモテ」
坂本がニヤニヤ笑いながら力を見ると、苦々しそうな顔で力はそんな坂本を睨み付ける。
「大学も合格したことだし、せっかくだから、力と内田はよりを戻して、佑人は東山の妹とデキちゃえば?」
尚も揶揄する坂本には言葉も返そうとせず、力は佑人の手を掴むとそのままたったか教室を出る。
「え、ちょ、力!」
「おい、力、合格したんならいい加減どこ受けたのか、教えたっていいだろ? 親友を仇やおろそかにするんじゃねぇぞ、おい、こら!」
力に引きずられるようにして佑人が出て行く後ろから坂本が声を張り上げたが、返事はやはり返ってこなかった。
「獣医学部だってよ、力のやつ」
帰り支度をした甲本がボソリと言った。
「じゅういがくぶぅ?!」
東山と坂本が見事にハモる。
「さっき加藤に報告してた。Y大とS大獣医学部受かったとか」
「あんのやろう、んなことひとっことも! おい、東、ここまでコケにされて俺ら黙ってられるかって」
「だぜ!」
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