ドアを開けるなり、タローが出迎えた。
タローはいつも力の足音を聞きつけてドアの前で待っている。
力の部屋を佑人が訪れるのは一カ月ぶりくらいになるだろうか。
「タロー」
思わずかがんでタローを撫でてやろうとした佑人だが、その腕をぐいと引っ張りあげられたかと思うと、いきなり唇を奪われた。
噛みつくように乱暴な口づけは次第に激しくなり、佑人は息苦しくて力のコートの胸の辺りを必死で掴む。
息苦しさだけでなく、力からひどく性的な生々しさを感じ取り、佑人の身体は少し怯えて、それを押さえつけようと佑人の指に力が入る。
十二月のイブの夜、初めて抱き合った時、佑人はそれこそ夢心地で力に任せてしまったし、力はおそらくかなり気を使ってくれていたに違いないのだ。
口では割と乱暴なことを言っているが、佑人に対してどれほどの優しさをもって接してくれていたか、もう十二分にわかっている。
けれども今の力は何か切羽詰まったというようすで、ようやく唇が少し離れたと思ったものの息をしたかと思うとすぐにまた唇を重ね、時折息を吐ぎながら舌を絡め、深く口づけられて、佑人は知らず後退るが、さらに力はぐいぐい壁に押し付けてくる。
ふと覗き込んだ力の目は野性味に色を帯びて、ドクドクという心臓の音が佑人の中を駆け巡ると、細胞からして溶けていくように身体中が緩くなる。
佑人の項に片方の手を回し、ひたすら佑人の口腔をまさぐっていた力だが、やがて佑人の首筋から鎖骨の辺りに熱い舌を這わせ始めたかと思うと、すっと離れ、次には佑人を抱きしめ、佑人の肩に額を押し付ける。
「……力?」
「わりぃ……」
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