東山の質問を坂本が適当にいなしていたところへ、力がやってきた。
「おう、力!」
東山と坂本の顔を見た途端、力はムッとした顔でソファにどっかと座る。
「てめぇら、何なんだよ」
「東山の合格祝いやってんだよ。あ、ついでにお前の合格祝いもやってやっていいぞ? で、どこの大学で獣医になるんだって?」
あからさまに機嫌の悪そうな顔を力は向ける。
「S大だよ」
むっつりと口を開かない力に代わって、佑人が答えた。
「S大っつうと、こっからすぐじゃん。いいとこ入ったな、お前」
それからしばらく卒業旅行の話などで盛り上がり、九時を過ぎるとそのうちにいくつかのカップルが帰り、常連客もまばらになった。
「さてっと、そろそろ俺らも帰るとするか」
ようやく坂本が立ち上がる。
「ったく能天気もいいとこだよな。いくら合格間違いないとか言われるっつっても、てめぇもちったぁ勉強しろよ」
「お前こそだ。あんまり佑人を振り回すなよ、まだ受験生なんだ」
「うっせ、わかってる」
東山と坂本が出て行くと、力はようやく邪魔者がいなくなったとボソリと呟きながらソファにもたれ掛かった。
「練!」
力が呼ぶと、練が奥からワゴンを押してやってきた。
「カフェリリィ特製バレンタインオリジナルだぜ」
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