自分が納得しなければ人に何を言われようと考えを変えることはないだろうが、力がもし地方の大学を受けると言えば、佑人もその近くの大学を受けようまで考えたのだが。
二日目も力の席の周りに三人集まって昼を取り、数学の試験を終えて帰りも何となく一緒に会場を出た。
「何か、あっという間だったよなぁ、な、リリィ寄ってく?」
溜息をついたり、項垂れて歩く受験生たちの中、試験が終わったという解放感なのか、坂本はテンションがまた高かった。
「お前って、ほんと、お気楽ヤロウだな」
ボソリと力が呟いた。
「おや、三人おそろいで。試験の帰りか?」
『ワンちゃん猫ちゃんとご一緒に カフェ・リリィ』のドアを開けると、強面にニヤリと笑みを浮かべて練が声をかけてきた。
「まあ、お二人さんは聞くまでもないが、力はどうだった?」
「知るか。何か食うもん」
鞄や脱いだコートを無造作に置いて、力は奥のソファにふんぞり返る。
夕暮れ時、常連客が二人ほどいる程度で、店内は暇そうだった。
佑人は力の向かいに座り、隣に坂本が陣取った。
「俺、コーヒーとペペロンチーノね」
「コーヒーとサンドイッチください」
坂本と佑人が交互に言った。
「力は? 食うもんじゃわからねぇだろーが。パスタかサンドイッチかケーキか」
「ケーキ以外全部」
「さては出来が悪かったわけだ? その仏頂面から察するに」
「うっせーな、いつもの俺の顔だ!」
練にからかわれた力は眉根を寄せ、練を睨みつける。
「センター試験に三段重箱弁当?」
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