やがてトレーに載せてきたパスタやサンドイッチをテーブルに置き、主に坂本から二日間の報告を聞いて練が聞き返した。
「そ、どんだけ人気女優渡辺美月様の手作りだぜって自慢してやりたかったか!」
坂本の相変わらず能天気な発言に佑人は苦笑いする。
「ってか、そこじゃねぇだろ? センター試験に三段重箱弁当ってとこが重要だろ。成瀬くん、でっかいこの荷物下げてったの?」
「ちょっと怪しげだったんで、最初に試験官に三人分の弁当ですって言ってチェックしてもらいましたけど。母が力と坂本の分もって張り切って作ったし、断るわけにもいかなくて」
ドラマの控室への差し入れか、遠足の弁当のように楽しげに腕まくりをして作っていた美月は、坂本に輪をかけて能天気といえるかもしれないが。
「え、却ってリラックスして緊張がほぐれるってもんでしょ」
「てめぇのどこに緊張があったよ」
しれっと言う坂本に突っ込みをいれながら力はパスタを掻き込むように食べる。
「お前に俺のデリケートな心がわかってたまるか」
「デリケートだ? 相変わらず笑わせてくれるぜ」
緊張と言えば、佑人は緊張していた。ただし、力がちゃんとできるだろうかという心配で。
だが、二人のやりとりを見る限り、杞憂に過ぎなかったかもしれない。
「にしても、あの試験官、船こがないようにって必死で眠気こらえてたのが笑えたよな、成瀬」
坂本が思い出し笑いをした。
「ああ、お昼の後だったからな。俺もガッツリ食べ過ぎて眠かった」
「俺も最後は寝てた。ぜってぇ試験官とかのバイトって俺、無理。寝ちまう。でも今日のおにぎりも凝ってたよな? バラエティに富んだ具が半端なく楽しめた」
「遠足気分でセンター試験受けるやつってお前らくらいだぞ」
練は呆れた顔をして三人を眺めていた。
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