一月の末あたりから私大の入試も始まり、三年Eクラスも大半が登校していないが、苦手科目の補講を受けるために来ている生徒もチラホラいたりする。
そんな中、何故か一月から毎日のように登校している者が約三名ほど。
力と東山、それに佑人だ。
補講授業のために教室にやってきた担任の加藤は、まばらに座っている生徒の中に佑人を認めて、おや、という顔をした。
「成瀬、お前ってこの補講を受ける必要なくないか? 俺より詳しそう」
すると周りが失笑する。
「家でやるより授業聞いていた方が頭に入るので」
あらかじめ佑人が用意していた返事に、加藤はフーンと言っただけで授業に入った。
みんなこれまでになく真剣に聞いているので授業はいつもより短く感じられる。
チャイムが鳴り、加藤が出ていくと、東山が早速佑人に授業の中でわからなかった問題を聞いてきた。
東山は既に一月の終わりに一校受験を終え、近日中に合否が決まる。
だが、今一つできなかったようで、二日後に受験する大学にかけている。
それがもしダメな場合、中盤にあと一校願書を出している。
「え、あ、そっか、なるほど俺ってバカ」
佑人の懇切丁寧な説明にやっと問題が解けたらしく、東山はふうと一つ大きなため息をつく。
「おい、お前、もう帰れ!」
二人が必死に問題と取り組んでいるところへ、力が唐突に割り込んできた。
「え?」
佑人が顔を上げると力は険しい顔で見下ろしている。
「人の受験の手伝いなんかしてんなよ」
佑人がいくら成績優秀だとしてもまだ合格したわけではない。人のことにばかりかまけていて万が一のことがあったらどうするのだと、力は言いたいのだ。
力と付き合うようになって、何となくだが、足りない言葉を予測できるようになった。
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