西高東低7

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 さすがに英語の補講は遠慮して授業が終わる頃また教室に戻ろうと、佑人は教室を出て図書館に向かった。
 さっきまた口喧嘩をしてしまったことで、何となく落ち着かない佑人は、好きな天体関係の本でも読んでみようかと、書棚を探す。
 最近地球型惑星が発見されたことをネットで見たが、そういうニュースは佑人の想像力をくすぐる。
 実際は何百光年も離れているような惑星に行けるわけもないのだが、頭の中では星々の間を移動することを夢想するのが、ずっと一人でいる時の癖のようになっていた。
 力との距離が急激に縮まってからは、何をするにも力抜きには考えられなくなった。
 それがいいのか悪いのか以前の問題だ。
 一度は、もし自分の好きな学科があれば力の受験する大学も受けてみようかなどと思ったこともある。
 佑人にとっては大学進学などさほど大きな問題ではなかったからだ。
中学の時、周りから疎外されたことで、一人を実感し、却って達観してしまった。宇宙に目を向けると人間がどれほど小さい存在で、いがみ合いなどいかにつまらないことか。
何もかもがちっぽけなことに思えた。
それでもやはり、力のことや家族のことやラッキーのことや、大切な存在に対する思いは常に佑人の心を揺さぶるが、人が重要視する大抵のこと、成績や学校や地位みたいなものへ執着はほとんどなくなった。
 だが、もし本当に力と同じ大学を受験したとしたら、力は怒るに決まっている。
 さっきみたいに、自分のやるべきことをしろって。
 やっぱり、そんなふうに言ってくれる力が、とても好きだ。
「よう」
 結局、本を開いたもののあまり内容に入っていけないままぼんやりしていた佑人は、声をかけられて顔を上げた。
「甲本」
「ほんと余裕だよな、成瀬」


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