西高東低8

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 確か数学の補講を受けていたが、同じクラスになってもあまり話したことはない。
「センター試験の時もさ、すんげ浮いてたぜ、お前ら」
「え?」
「南澤の連中も割といたんだぜ。T大合格間違いなしな二人とあの、山本力が、でかい弁当広げて遠足気分でガッツリ食ってて、みんな戦々恐々とメシどころの騒ぎじゃねってのに、マジ、あり得ないよな。俺もう笑っちまってさ」
 非難しているわけでもないようだが、佑人はどう返していいものか戸惑った。
「あ、いや、わりぃ、その何かさ、山本力って結構色々言われてるヤツだし、イベントとかはあいつに頼ったりするくせに、普通にダチってつき合い、つい敬遠しちまうってか。ま、俺ら小心者だからな」
 甲本は自嘲するように笑う。
 確かに佑人は二年の時から力が周囲にどう見られているかはよくわかっている。その周りにいる自分たちも近寄り難く思われていることも。
 だがこの甲本は内申をよくしてもらうためとわざわざ言い訳をして、みんながやりたがらないクラス委員を引き受けたり、肝心要なところで一言言ってクラスを引き締めるといった感じのリーダータイプで、本人が卑下するような小心者などではない。
「俺、山本や坂本と同じ中学だったからさ、山本のことだけじゃなく坂本もできるやつだけど結構曲者だって知ってたし、だから成瀬、何で奴らとつるんでるのかなって、どっちかってぇと、成瀬って優等生じゃね? つい、噂で聞いたみたいに、奴らに無理やり引っ張りこまれていいように使われてんじゃねぇのかとか、さ」
 今度は佑人が苦笑する。担任にさえイジメでも受けてるのではないかなどと勘繰られたこともあったのだ。
「いや、別にそんなんじゃないし」
「ああ、うん、だからさ、さっき教室で、成瀬が東山に教えてやってた時、山本が、帰って自分の勉強しろって言ってただろ。お前、勝手にするとかって言うし。で、なんだ、やっぱ噂なんてあてになんねぇなって」


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