空は遠く118

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 その時、表に車が停まる音がした。
 途端、目の前で椅子にふんぞり返っていた男が立ち上がった。
 やがてドアが開いて、佑人が顔を向けると、スーツを着た男が数人ぞろぞろと入ってきた。
「カツマさん、ご足労おかけします」
 男たちに囲まれて中心にいる男に、先ほどまで佑人にヘラヘラと相手をしていた男が駆け寄って、平身低頭、ぺこぺこ頭を下げながら、意味ありげに佑人を見やる。
 明らかに堅気ではない、夜というのにサングラスを外さないカツマと呼ばれた男が、佑人を振り向いた。
「フン、なかなか可愛い坊やだな。使えるかもしれん」
 ようやく佑人は、男たちの目的が高校生同士の喧嘩とは何か別にあるのだと気づき、ガタンと椅子を引いて立ち上がる。
「あっ………」
 目の前の男たちの顔が揺れた。
 膝がガクンと落ちるように倒れこむ佑人を、男の腕が抱えた。
「遅ぇぞ、効くの。てめぇ、ちゃんといれたのかよ」
「たっぷり入れたって、カジ」
 朦朧とする佑人の耳に男たちの会話が聞こえる。
 『ちょっと妙な連中がついてるみたいだから』
 クリスマスイブの夜、練が言っていた言葉が佑人の頭の中でよみがえる。
 『てめぇだけで何でもできると思ってんじゃねぇ!』
 力の怒鳴り声も聞こえた気がした。
 どうやらあのまずいコーラに薬を盛られたらしいことだけは理解できたものの、そこから佑人の意識は急速に遠のいた。

 


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