母親は上谷の妹と一緒に向こうに行って、今は受験の関係で日本に残った上谷が一人だけだと話していた。
「母は日本語があまり得意じゃなくてね。成瀬、今日は家に誰もいないんだろ? だったらいいじゃないか」
逡巡しながら佑人が顔を上げると、前を行く力が振り返り、険しい表情でこちらを睨みつけているのに出くわした。
な…んだよ、いきなり人を睨みつけて! 俺が何かしたかよ!
「あ、うん、それじゃお邪魔しようかな」
何となくイラつきついでのように、ついそう答えていた。
「よし、じゃ、決まり。成瀬、甘い物好き? ケーキとか買って行こうか?」
二人は歩みを速め、ちんたらよりそうように歩いている力たちを追い越した。
若宮って言ったっけ……
はっきりものを言うタイプで、よくクラスの女子とつるんで力のところへ来ていた。
あの子たちはおそらく力が好きで、できれば彼女というポジションが欲しいと思っているのだろうとは、容易に想像がついた。
今度は彼女がそのポジションをゲットした、ってとこか。
前の彼女って、俺がヤツラに絡まれたせいでクリスマスイブに力に置き去りにされて、そのままだっけ。
ひっでぇやつ。きっと泣いたんだろう、あの子。
そういえば、と佑人はいつぞや会った和泉真奈のことを思い出した。
俺も泣かしたんだっけ、人のことは言えないか。
生憎、俺、そんな強くないんだよ。でもあれで、ふっきれただろ。俺に謝らなければならないとか自分を責めていたのだとしたら。
フフ……、俺ってとことん、捻くれて狭量なやつな。
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