空は遠く291

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 またしても力の唐突な行為に驚いて佑人は力を見上げる。
「ひょっとして信じちゃった?」
 力はニヤリと笑う。
「鍵持ってたろ? それって、俺の告白受け入れて、OKでーす、とかってことかな?」
 一瞬、頭が真っ白になった佑人だが、力のお茶らけた言いぐさに、心は次第に冷えていく。
「バカじゃないのか、熱がありそうだったし、『何かあったら、また看病に行かなけりゃならないかも』ってだけだ。東山にも頼まれてたし」
 佑人の口から出た言葉は、抑揚がなく、冷めていた。
「………フン、そうかよ」
 佑人の身体を突き放すと、力は面白くなさそうに佑人を睨みつけて、また階段を上がっていった。
 バタン、と屋上への扉が閉まる。
 しばし、動けずにいた佑人はようやく我に返って、階段を降り始めた。
 だが、膝ががくがくと震えているのに気づき、ちょっと足を止める。
 行かなけりゃ……
 佑人は自分を奮い立たせる。
 うっかり、あいつの仕掛けたトラップにはまるとこだった。
 大丈夫だ、まだ。
 あいつの戯言を信じて告白なんかしたわけじゃないんだから。
 大丈夫。
 とにかく、行かなけりゃ……。
 一人でいられるところ。
 結局図書館の奥の書庫しか思いつかなかった佑人は、そのまま図書館に入っていった。
 専門書ばかりの奥の書庫には、滅多に人が来ない。
 以前、上谷と会ったことがあるが、最近ではたまにこの書庫に足を運ぶのは佑人くらいだ。

 


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