つっけんどんな言い方で練が聞いた。
何かの拍子に、右腕の袖口からタトゥーが見えたし、その額にはくっきり傷がある。ただの恐持てではない雰囲気だと佑人は感じた。
「はい」
ショーケースは二つあって、人間用のケーキが並ぶケースの横には、ペット用のお菓子やケーキ、食事とのセットプレートなどが並んでいた。
やがてカフェオレを運んできた練は、恐持てなのは顔や雰囲気だけのようで、丁寧に佑人の前にカップを置くと、百合江の前にも一つ置いた。
「ありがとうございます」
こんな店があったんだ、ラッキーにも買って帰ろうか、などと佑人が思っていると、ドアが開いてテリアを抱いた欧米人らしい女性が入ってきた。
女性はショーケースの中をのぞいて、犬用のクッキーやケーキをいくつかほしいと練に言っているのだが、練は英語が苦手らしく、見当違いの種類や個数を箱に入れて、女性に違うといわれ、「ったく、日本語で言ってくれよぉ」と口にしながら四苦八苦している。
「困ったわね~、あのお客さん時々来てくれるんだけど」
「練ちゃん、若いんだから英語くらいマスターしときないさいよ」
百合江がボソッと言うと、馴染みの客が練をからかう。
「あの、ビスケット五個とキャロットケーキ二個と、セットプレート一つだそうです」
ほうっておけなくなって、佑人が助け舟を出すと、皆の視線を一斉に浴びる。
「お、お前、英語わかんの? じゃ、俺の言うことちょっと説明してやってくれよ」
図体のでかい、外見はアメリカ人のような練が、情けなさそうな声で佑人に言った。佑人は練がビスケットやケーキについて説明するのを女性客に通訳した。
女性が満足して帰った途端、練が「すげぇな、お前、ガイジンみてぇ」と恐持ての相好を崩しながら手放しで喜んで、「おい、俺のおごり、ケーキ、どれでも食え」と命令口調で佑人を促した。
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