急に眩しくなって、優作は眉を顰め、起きだしたくないところを無理やり起き上がった。
脳がまだ死んでいて目は開けられず、しばらくそのままぼおっとしていたが、ようやく重い瞼を開いた。
だが瞬きしてもどう考えても記憶にない部屋の状況に困惑が広がる。
恐ろしく寝心地のいいベッドに羽根布団。
しかもキングサイズ。
見回すと広いその部屋は昔映画か何かで見たゴージャスなホテルの部屋のようだ。
「え……何? ここ……」
スッキリしない頭で現状を把握しようとするが、さっぱりわからない。
しかもTシャツ一枚とジーンズのまま寝ていたらしい。
確か……夕べ、飲み会で、その後、どうしたんだっけ?
スニーカーはベッドの傍に置いてあるが、羽織っていたパーカーはどこにいったのだろう。
「あ、やっと起きた」
ドアが開いて笑顔をのぞかせたのは、昨夜、優作がこんなやつとは適当につきあってればいいと決めたはずの当人だった。
「へ………???」
「朝めし、食う? オムレツとサラダくらいだけど」
そうだ、昨夜、俺、こいつのマンションに来て……何か、琴子がどうのってこいつが言ってて、それからビール飲んで……それから……????
優作は慌ててスニーカーを履くと、将清の後を追って部屋を出た。
そこは明るい日差しを浴びた広いリビングで、グランドピアノなんかも置いてある、確かに夕べみんなで酒盛りをしていた部屋だ。
一面ガラス張りの大きな窓からは東京の街並みが遠くまで見渡せる。
「今朝がたみんな帰ったけど、お前、よく寝てるから可哀そうだから起こさないでやろうって」
将清は笑顔を浮かべて優作の頭を掻きまわす。
その手をうるさそうに払いながら、優作ははたと気づいた。
「えっ? 今、何時? あ、携帯! 俺のカバン……」
きょろきょろ見回す優作に、「ああ、そこ、お前のリュックとパーカー」と言われてみると、ソファに揃えて置いてある。
「ま、この時間じゃ、どうせ一限目間に合わねーし、ゆっくり食おうぜ」
「え………」
リュックから携帯を見つけて時間を確認すると、優作はガックリと溜息をついた。
このテイタラク、何がきっちり卒業してだ。
「コーヒー、飲むだろ?」
キッチンの近くに、テーブルセットがあって、そこには湯気の立つオムレツやサラダ、パンなどが並んでいる。
将清はコーヒーサーバから熱いコーヒーをカップに注いでいた。
「ほら、冷めないうちに食えよ」
言われるまま促されて優作は将清の向かいに座る。
「……これって、まさか、お前、作ったの?」
「俺、一人暮らしだし、他に誰が作るんだよ?」
程よい硬さのオムレツは美味いし、ちぎっただけのレタスにトマトのサラダだが、ドレッシングがまた美味い。
コーヒーに口をつけてソーサーに置いた時、何か違和感を感じた。
「……何……?」
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