ACT 4
ゴールデンウイークは家に帰らず、優作はアパートの近くにあるコンビニのバイト中心で過ごし、前からやろうと思っていた美術館巡りをした。
あらためて全く一人で行動しているのだと実感すると、四月中いつも騒がしい連中が周りにいたことを思い出して、少し寂しい気もしないでもない。
やっぱり家に帰るっていえばよかったかな。
姉からも帰ってくればいいのに、とラインがきていた。
じゃあ帰るとか言ったら、また、将清あたりにはガキだとバカにされそうだ。
あんなに頑なに拒否することもなかったようにも思うのだが、今更、また友達付き合いしてくださいとかはないだろう。
第一、あれから誰も優作に近寄ってくるやつもいなかったし。
「ぼっち、上等じゃん」
負け惜しみで口にしてみると、よけいにひとりという事実を感じてしまう。
高校時代の同級生の中にも上京している者もたくさんいるし、何より、同じ大学に進学した連中もいるはずだ。
だが、もうずっと、同級生の枠を超えた友達付き合いをしてこなかった優作には、休みに顔を合わせようというような者もいない。
おそらくこれからもそんな感じで、人生過ぎていくんだろうと思う。
そのうち、誰かと、例えば将来結婚するような相手と巡り合うことだってあるかもしれないし。
優作はまだわずかにそんな望みも捨ててはいなかった。
まだ始まったばかりの大学生活なのだ。
「よう」
携帯が鳴ったので、ひょっとして将清かと画面を見ると、元気からだった。
「休み中、こっちいるのか?」
「ああ。元気は?」
「バイトとライブかな」
「俺も、バイトづけ」
「今夜もバイト?」
「いや」
「んじゃ、ちょっと出てこねえ? 下北沢」
「下北沢?」
よくわからなかったが、改札で待ち合わせることにした。
やっぱり、たまには誰かと言葉をかわしたい、気がした。
初めて降りた下北沢南口改札を出たところで待っていると、ギターを背負った元気がやってきたと思うや、ライブハウスに連行された。
入った時は、バンドの交代の時間だったらしい。
「はい、ノンアル」
元気に渡されたカップを受け取った優作は中を見回した。
いわゆるメタルらしき厳ついというかムサイ連中があちこちにたむろしている。
女の子もいるが、圧倒的にヤローが多い。
「優作だから特別に、ここ奢りな」
「元気のバンド? ライブやるのか?」
「いやなんつうか、寄せ集めみたいな? 一平の昔のバンド仲間とかと、曲もクラシックなやつのコピーだし」
一平ってあの、いつも元気と一緒にいる用心棒だな。クラシックなやつ?
バンドなどに詳しくない優作の頭にははてなマークが浮かぶ。
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