ちょっと避けはしたが、大きな声で咎めるほどのことかと優作は思う。
「また夕べも無様に尻もちついたりしてみっともないだろ! 大体俺ごときが顔合わせなかったからって何? みんながお前のこと見てないと気がすまないわけ?」
苛ついてつい、そんな言葉が口をついて出た。
それこそ俺は、昨夜将清が俺じゃなくてミドリと帰ったからって、何を苛ついてるんだ?
「優作」
将清の目に少し傷ついたような色を見つけて、優作はそんな棘を持った言葉をぶつけるつもりはなかったのにと後悔した。
思い上がりは俺じゃん、バカみてぇ………。
放った言葉はもう取り返しはつかず、優作はそれ以上何も言えないまま踵を返した。
ミドリからのラインに優作が気づいたのは、コンビニのバイトを終えて弁当を手に店を出てからだ。
リュックからマナーモードにしていた携帯を取り出した時、チカチカ光っているのに気づいて画面を見ると、「大事な話があるからバイト終わったらシーガルにきて」とだけ、どこのとも時間も何もない。
だが、ミドリは優作のバイトが終わるのが十時だと知っているし、おそらく前に一度入った店だろうと優作は見当をつけてとりあえず近くのファミレスのドアを開けた。
店内を見回すと、ミドリは一般人らしからぬオーラと美貌ですぐ見つかった。
「優作!」
向こうも優作を見つけて手を振った。
今日もファッション誌から抜け出したようなミドリだが一人である。
お陰でこんな美人とカップルなのかというような羨望の視線を感じたが、同時に、何でこんな男がと思われているに違いないと、また卑屈な自分が笑えた。
「何? 俺、メシまだだから、早くしてほしいんだけど。弁当、冷めちまうし」
優作は弁当の袋を掲げて見せた。
ミドリのことは明るいサバサバした性格も嫌いではないし、友人だと思っている。
だがミドリがどんな美人だろうと、優作がここに来たのは、ラインの内容がらしくない、切羽詰まった感じがしたからだ。
いったいなぜ自分に、しかもそんな大事な話なんかをしようと思ったのか、それも気になったのだ。
「弁当は持って帰って明日とか食べればいいじゃない。呼び出したんだから、夕飯は奢るよ」
本当に腹が減っていたので、優作は遠慮なくハンバーグ定食にした。
「あたしもお腹すいてきた。あ、このチキンステーキ美味しそう、これにしよっと」
ミドリは優作もスカッとするような食べっぷりで、ガッツリご飯も平らげ、食後のコーヒーがきた頃になって、そういえば大事な話があるとか深刻そうにラインくれたんじゃないのかよ、優作は心の中で突っ込んだ。
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