むしろ嫁に来ようか、などと言っていた元気との生活の方がまだ想像できる。
結婚となれば、それだけではない。
家庭をつくるということなのだから。
興味を持つことすらできなかった。
実は少なからず自分に興味を持たせてくれる相手に会えることを期待していた優作としてはがっかりだった。
ところが、さっきの電話で将清には、しばらく付き合ってみる、なんてことをつい口にしてしまった。
大嘘だよな。
優作は一人で笑った。
常に対抗意識を燃やしている将清には不様なことは言えないのだ。
翌朝、将清に捕まったのは、会社に着いて早々だった。
「ちょっと来い」
クールな目をした将清がわざわざ優作の部署まで来て立っていた。
「何だよ」
優作は怪訝な顔を向けた。
「いいから来いよ」
将清は怒ったように言ってたったか前を歩く。
近年全館禁煙となってから、廊下の突き当りの非常口には、たまにヘビースモーカーたちがこっそりたむろしている。
中にはマナーの悪い者もいるようで、優作は落ちている吸殻を拾う。
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