間近で見ても、端正で精悍な顔がじっと優作を見下ろしていた。
無論、こっちはフルネームで知っていても、向こうは優作のことなど知らないに違いない。
将清はぐいと優作の腕を掴んで身体を起こした。
「ならいいけどな、ったく、バイクでカッコつけたいのはわかるが、もちょっと腕磨いてからにしろよな、見ろよ、これ!」
チャラチャラしている割には親切なやつなのかも、などと思ったところだったが、その一言で優作はカッとして将清を睨みつけた。
「何だと……!?」
このやろう、自分こそ高そうな車に乗ってチャラチャラしてるだろうと続けようとして、優作ははっとした。
将清は優作が突っ込んだために花が倒れたり折れたりしてしまったチューリップを植えなおしていたのだ。
「…っって…!」
慌てて立ち上がろうとして、ぶつけた腕の痛みに思わず声を上げる。
「おい、大丈夫か? 病院行った方がいいぞ」
「大丈夫だ。俺がやるからいい」
優作はヘルメットを取ると、将清の横で倒れたチューリップを植え直し始めた。
将清の足元には、『みなみようちえん ひよこぐみ』という札が見えた。
「お前さ」
「だから、俺がやるからいいっつってっだろ!」
すると将清は唐突に笑い出した。
「何、笑ってんだよ!」
「何かお前、こないだこれ植えてた子とおんなじ顔、口尖らせちゃってさ」
これ植えてた子?
「……って、てめぇ、ガキどもと一緒にすんな!」
優作が怒って振り返ると、将清はすっと後ろに飛び退いて、笑いながらキャンパスに向かって走っていく。
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