「悪かったな! 好きだった昔の俳優の名前をつけたのはかあさんなんだよっ!」
途端、ウソッとミドリが言ったかと思うと、また盛大に笑い出した。
名前についてだけは優作は母親をのろった。
まだキラキラネームとかの方がどれだけマシだったか。
前にも名前の由来を言ったら同じような反応をされたのだ。
優作も気になって、母親が好きだった往年の名俳優の映画を見たことがある。
おそらく、今も知っている人は知っている、男らしいカッコよさしかない俳優を思い浮かべたに違いない。
「きゃああ、ダブルギャップ萌え!」
「わかる! 俺もさ、元気なんて名前つけてくれたおかげで、風邪一つ引けないんだぜ? けど良かれと思ってつけた親を怨んじゃいけねぇぜ? 優作ちゃん!」
元気がさも気の毒そうに頷いた。
「だから、ちゃんづけすんなつってっだろ!」
優作が喚くたびに周囲に笑いが広がっていく。
「ほら、相方が呼んでるぜ、元気。センセも来たし、ほら、みんな、散れ!」
いかにも手を差し伸べたかのように偉そうに優作の隣に陣取った将清が指図すると、ようやくその場が沈静化した。
以来、友達が一人もいなかったはずの優作は、何でだよ?! という心の叫びも虚しくいきなり一番華やかなメンツの中に放り込まれることになってしまった。
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