「どした? 優作」
はい、とビールの入ったグラスを差し出されて部屋の隅の方に突っ立っていた優作は顔を上げた。
何がどうなっても、こんな芸能人みたいな、いや、ミドリはモデルだから芸能人に分類されるのか、そんな美女にビールを渡されるなんてシチュエーション、考えてもみなかった。
「いや、すんげえとこに住んでるなって、あいつ」
受け取って、一口飲んだが、慣れていない酒は苦いばかりだ。
「ああ、祖母が入学祝に買ってくれたんだってよ?」
「すんげえ祖母って、何者?」
「ああ、ほら、スグナオールって風邪薬、知ってる?」
「俺、その薬じゃないと風邪治んねーし」
「やっぱ誰でも知ってるみたいね、祖母ってそこの社長。将清、高校の時まで祖母と暮らしてたから、いっつもあたしのうちとか、入り浸っててさ」
え? じゃ、やっぱミドリが彼女なのか?
芽衣かどっちかだと思ってたけど。
「わりいな! うちは禁煙なんで、どうしてもなやつはバルコニーかどっか行け」
声がする方を見ると、将清が誰かが口にくわえた煙草を取り上げている。
「何だよ、大学入ったからやっと大っぴらに吸えるってもんだろ」
「バッカ、煙草なんか、高校卒業したらすっぱりやめるもんだろ?」
「将清、お前……っ!!」
もうかなり酒が入ってみんながゲラゲラ笑っている。
「ほんとにやめたもんね、煙草、高校卒業したら」
隣でミドリも笑っている。
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