ひまわり 3

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 優作も十分滑れるのだが、N県出身と名乗るには、もう少しきっちりマスターしておきたかった。
 何せ一緒に行くことになっていた男の腕は遥か上を行く。
 実はそんな男と比べられて、自分が恥をかきたくない、というのが、本当の理由だったのだが。
 優作は近年自分の一番身近にいる男の気さくで大らかな笑顔を思い浮べた。
 大柄で大学時代は体育会系には属していなかったが、中学時代までアメリカで育ったという帰国子女で、アメフトで鍛えられたらしく、テニスやバスケなど何をやらせても卒なくこなし、男らしい端正な顔つきといい、バイリンガルどころか数カ国語を操り、しかも頭も切れる、と何拍子も揃ったその男は女にも当然よくもてる。
 そのせいか、女の子をとっかえひっかえ、長く続いた試しがない。
 大らかといえば聞こえはいいが、楽天家でマイペースこの上なく、周りはいつも振り回される。
 要は無節操なやつなんだ。
 思い出すだけで腹立たしい。
 第一大学時代べったり一緒だったのだから、何も同じ会社に決めなくてもいいじゃないか、と思う。
 最初に出版社を希望すると宣言したのは優作の方だ。
 なのに内定をもらって有頂天で研修に行った先にあの男もいたのだ。
 優作は今、地味で気を使うばかりの美術誌の編集部にいるのだが、いや、優作自身が絵をみることが好きだと面接のときに強調したことが関係しているのだろうとは思うのだが、華やかなスポーツ誌の編集部に配属されたあの男とお陰でまた比べられることになった。
 コトリと大きめのグラスが優作の前に置かれる。
「あ、ありがと」

 


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