ひまわり 44

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「あと一人、来てくれるって。佐野、優作のこと頼むわ。俺、そろそろスタンバっとかないと」
 元気が楽屋の方に行ってすぐだった。
爆発的な音の嵐に見舞われて、優作は思わず固まった。
 って、この中で、どうやって言葉なんか交わすんだよ!
ボーカルが何かがなっているが何を言ってるのかさっぱりわからない。
「このバンド、うまいね。俺、ギターがどうとは詳しくないけど、こういう曲も好きなんだ」
 佐野が優作の耳元で声を大にして言った。
 正直、初めてこの手の音を聞いた優作には、地を這うように重くて激しい音の羅列が、何がいいのかさっぱりわからなかった。
 え……、まさか、元気もこういう系?
 せいぜい高校の学祭で聞いたくらいで、無論ヘタクソバンドだったが、そっちの方が何を言ってるか歌詞くらいはわかったから、クソミソにけなしてむしろ悪かったと思ったくらいだ。
 二曲目を聞いても三曲目を聞いても、その音に慣れることはなく、四曲目でラストとなった時はつい溜息をついた。
「ゴメン、俺、この手の音楽はちょっとカンベン。何言ってるかわかんねーし」
 今のバンドが引っ込んでから、優作はボソリと佐野に言った。
「そっか。まあ、でも元気のはきっと大丈夫だよ。昔の曲だけど、歌詞、わかるタイプの曲だと思う。すごいうまいんだよギター、元気って。プロはだしって感じ?」
「そうなのか?」
 力説する佐野の言葉がまんざら誇張でもなかったことは、元気が音を鳴らし始めてすぐ、ロックなどに疎い優作にもよくわかった。
 憂いを含んだバラード、一平の低い声が英語の歌詞を紡いでいく。

 


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