「ま、あんまり俺もこの店好きじゃないな」
「え?」
「ああ、いや、質の悪そうな連中もいるみたいだからな」
「質の悪そうな連中って?」
「いや、何となく」
優作は言葉を濁してジントニックを飲み干した。
「ねえ、将清ってずっとニューヨークにいたの?」
「友達もあっちにいたんだよ、あの子。懐かしいから話したいって」
いつの間にかその店で将清目当ての女子が増殖していた。
穂香と千秋が将清の腕を取って、その女子のところに行ってしまうと、優作は何となくつまらなくて、ノンアルだというそのカクテルを口にした。
ミドリと芽衣は元気と楽しそうに話している。
一緒に来た男たちは店で出会った女の子をナンパしかけている。
口当たりはよかったのだが、優作は将清と離れてしまうと手持無沙汰なだけで面白くもない。
するとそこへ元気の用心棒も現れて元気を探していた。
その時だった、突然、将清が隣のカップルらしき二人のうちの男の腕を捻り上げ、グラスが落ちて派手に割れる音がした。
優作がはっとして駆け寄ろうとすると、将清が何か喚いている男の腕を掴んだまま、店を出て行こうとしている。
何だよ?
不安な面持ちで、優作はあとを追った。
外はさっきから降り出していた雨が強くなっていた。
店から走り出した優作が辺りを見回すと、将清が先ほどの男に殴りつけている。
「将清!」
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