ひまわり 53

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「ラジャ!」
 優作は元気に抱えられながら少し歩いたが、頭のパニックがまだ収まらなかった。
 用心棒がもう一台タクシーを停めると、元気は優作を奥に押し込み、自分も乗り込んだ。
 助手席に乗った用心棒が、大学の近くの地名を運転手に告げると、車は走り出した。
 その夜、優作は元気のアパートに連れて行かれて、言われるままにシャワーを浴びると、元気が温かいミルクティを作ってくれた。
 用心棒は缶ビールを飲みながら床に座っていた。
「手、貸してみ」
 元気が優作の手を取ると、手のひらのかすり傷に絆創膏を貼ってくれた。
「怪我はしてないみたいだが、大丈夫か?」
 将清に突き飛ばされた時はしりもちをついたが、手をアスファルトで擦っただけだ。
「ゴメン、ありがとう」
 ようやく優作はそれだけ言った。
 まだ将清が男を殴りつけている衝撃的な情景が頭にあって、優作は眉を顰めた。
「ベッド使っていいから、もう寝ろ」
 元気の声は優しかった。
 一瞬申し訳ないとは思ったものの、もうとにかく眠ってしまいたかった。
 ショックを受けたのは将清に突き飛ばされたことだけではない。
 なんだ、やっぱりミドリ、将清とまだつきあってるんじゃん。
 そんなことを思った途端、何か重い、痛いものが胸の上に乗っかったような気がして、けれど優作はそれが何なのかわからなかった。
 元気がくれたミルクティには多分何かアルコールが入っていたのだろう、身体がフワフワして、優作はやがて眠くなってきた。

 


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