「やだ、モデルのために生きてるんじゃなし、食べるななんて言われたらとっととやめるわよ」
これがミドリの潔さでもある。
「ランウエイに命かけてるって人には申し訳ないけど、あたしはどうせバイトだし」
軽く言ってコーヒーを飲む。
「わかったよ。それで? モデルのことじゃないんだろ? 大事なことって。ってか、何で俺? 俺、何も知らないし、経験もないし、田舎者だし、ミドリに相談されるようなヤツじゃないだろ? 将清には話したのか? その大事な話って」
ひょっとすると将清のことだろうか?
俺が将清と最近親し気だから、元サヤに戻りたくて力を貸せとか?
そういった頼みごとを他の女子からはちらほらされたことがあった。
将清と親しい俺から合コン誘ってほしいとか、二人で話したいから、お願いしてほしいとか、携帯番号教えてほしいとか。
そういう時、将清に聞いてからじゃないとわからないとしか答えようがない。
第一、見も知らない女子のために、そこまでする義理は優作にはない。
けれどこれがミドリなら、話は別だ。
「その、優作のことなのよ」
ミドリの言葉は深く重く優作の心に飛び込んだ。
優作は知らずゴクンと唾をのみ込んでミドリを見つめた。
「え、ミドリなら多分、将清の彼女だって思われてるし、俺なんか協力できることなんかないぞ? 元サヤに戻りたいって将清にちゃんと言えば……」
「違うよ、あたしのことじゃなくて、ってか、元サヤとか、あたしらそういうんでもなかったし」
「だって、将清のこと一番わかってるのはミドリだろ?」
「ある意味そうだけど、身体の付き合いはあったけど、将清もあたしにそういう感情はないと思うわ」
優作はその言葉に渋面を隠せなかった。
back next top Novels