ひまわり 63

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 電車なら一駅、歩いても十五分ほどのところにあるアパートの二階に優作の部屋はあった。
 既に一日の終わりに差し掛かっていた。
 階段を上がって、自分の部屋に向かおうとした優作は、ドアの前にうずくまっている人影にぎょっとして足を止めた。
「よう……」
 気配に気づいて立ち上がった男は、耳からヘッドフォンを外すと優作に頼りなげな笑みを向けた。
「将清……」
 状況を把握できずに、優作はしばし立ち竦んだ。
「どうして……」
「今夜、いい月夜だろ? 何か、お前の顔見たくなって」
 将清は笑った。
「何だよ、それ………」
 優作は鍵を取り出してドアを開けた。
「いつから待ってたんだよ、ラインすればいいだろ」
 中に入って、優作が文句を言った途端、将清は背後から優作を抱きしめてきた。
「悪い……しばらくこのまま、いいか……」
 驚いて身動き取れない優作に、将清が凍えるような声で言った。
 高校の時は寝てたけど、彼女とか、そういうんじゃなかったし。
 あたしがどんなに……将清のこと好きでも、ダメ……なんだ……
 将清を見捨てないでやってほしい。
 ミドリの言葉が一つ一つ優作の脳裏に浮かんでは消えた。

 


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