ひまわり 70

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「毛利さん、社長のお嬢さんと結婚を前提に付き合ってるって、ほんとなんですか?」
 不意に、足元が不如意になる。
「知ってるんだったら教えてください」
「い…や…俺は何も」
 知らない。
 そういう話がいつ、将清の口から聞かされてもおかしくないと、そう思っていた筈だった。
「そうですか。でもありえますよね、毛利さんって、すごい旧家の生まれで、社長とも昔から知り合いだったみたいだし」
 そんな詳しいことは、何も知らない。
 おばあさんが製薬会社の社長、その程度だ。
 考えてみれば、将清のことをほんの一部しか知らないのだ。
 おばあさんの家に遊びにいったこともある。
 大きな家で、ちょうど海外赴任の将清の家族が休暇で帰国してその家に滞在していた。
 おばあさんはニコニコしていて、随分のんびりした商社マンだという父親、優しい母親としっかりした兄夫婦、それにニューヨークで医師を目指しているという弟もみんなが大らかな家族だった。
 大学でのことなど聞かれたが、家族がどうのとかは聞かれなかった。
 代わりに将清が、夏休みに優作の家に泊めてもらったが、お姉さんが二人いて両親もみんな優作を猫かわいがりしているというようなことを話して聞かせた。
 それだけだ。


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