「かっ飛んできたわけやね」
「ほんとに冗談じゃなくてさ…そこ通してくれないか」
元気は将清の前に立ちはだかったまま、ドアをノックした。
「俺にキスしたらな」
怪しい光を見せて元気の目が将清を見上げ、将清の首に元気の腕が絡む。
「お前、酔ってんな?」
「元気、まだ、そこにい…」
ちょうどドアを開けた優作は、元気の唇が将清に重なるのを見た途端、またドアを閉めようとして、すかさず将清に足を突っ込まれる。
将清は、すごい勢いで元気を離すと、ドアの向こうに無理やり身体をねじ込んだ。
「どうして元気と…俺は、俺はお前のことずっと好きだったのに…ずるいよ、お前…」
優作が泣きながら喚いている。
「優作、違う、俺は…」
情けない将清の声を聞くなり、バン! と元気はドアを閉めた。
「やってらんないね。ご近所迷惑って言葉を知らないのか、バカップルめ!! ミドリのヤツもいったい優作に何言ったんだ! けしかける方向性間違えやがったな!? 六年もやつらを迷走させやがって! たくどいつもこいつも! どうせ俺は狂言回しだよ」
元気は忌ま忌ましげに呟く。
「こんなおとぎ話な結末があっていいわけがない。いばら姫だって、王子と結婚してからがいばらの道だったんだからな」
エレベーターに乗り込んでからも、あほらしさが収まらない元気だった。
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