ひまわり 87

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「今だからこそだろ。ああ、胸につっかえていたものがすっきり落ちた気がする」
「何が、すっきりだ! 何が!」
 優作はパコンと将清の頭をはたく。
「それより、ベッドってか、あれ……あのままでいいのかよ……」
 それが気になっていた優作だが、「ああ、ぐっちょぐっちょのシーツ?」などとわざと口にする将清を再びはたく。
「ってぇな、あんなの、ほっとけばいんだよ。ホテルなんかどこでもそうだろ。CSIのキャサリンがホテルに臨場するといっつも、体液まみれだわ、って言ってんじゃん」
 悪びれもせずそう言って、恥ずかしさMAXな優作に再度はたかれた将清はへらへら笑いながら、はたいた優作の手を引っ張って、恥ずかしげもなくいやらしいキスをした。

 うろこ雲が広がったさわやかな秋空がすがすがしい。
 秋祭りも近いようだ。
 ギリギリにホテルの朝食を済ませて十一時も過ぎた頃、伽藍に寄ると、元気はいつもの穏やかな笑顔で向かえて、カウンターに座った二人に熱いコーヒーをいれてくれた。
 できればこのまませめて二、三日のんびりしたいところだったが、将清は仕事の合間を縫って飛んだ来たらしい。
 これから帰っても即編集部に直行で、日曜も休日出勤は免れないという。
「そういえば、うちの親が珍しくクリスマス辺りに日本に来るらしくて。せっかくだから兄貴一家や弟も呼んでパーティやろうって言ってるから、お前も行こうぜ」
 優作は愛車のハンドルを握る将清をチラリと横目に見やる。
「俺? って、家族の集まりなんだろ? 俺なんか行っていいのかよ」
 将清の家族に会うとなると、学生の時以来だ。
「俺なんか、とか今度言ったら、罰金千円。親が、お前も絶対連れて来いってから」
「何、勝手に決めてんなよ」
 将清との関りを考えると、ほいほい自分が顔を出してもいいのかと思ってしまう。
「前に一度、うち来ただろ? あれ以来、俺の恋人をまた連れて来いってうるさいからさ」
 俺の……
「恋人っつったか、お前?!」
「ああ、あの時もうとっくにそう紹介してる」
 一つ間違えば断崖絶壁の山道を走る車を運転している将清の頭をはたくのは自分にも不都合になるため、優作はぐっとこらえる。


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