「で? 結局、一平を振って、豪を選んだわけだ?」
元気にこそっと耳打ちして、毛利がニヤニヤ笑う。
「うっせえよ」
「今度はゆっくり飲もうぜ。あ、そっちにもまた行くわ」
編集部に戻っていく忙しない友人と別れてから、引き出物も土産と一緒に宅配便で送る手はずを整えると、元気はそのまま豪にチェロキーで兄の家に送らせる。
兄一家に挨拶を済ませ、名残惜し気な甥っ子二人に見送られながら、今度は品川駅まで送らせた。
「元気が頼る唯一の人って、お兄さんなんだ」
運転席で思い出したように豪がぼそりと言った。
「はあ? 今更何言ってんの? 俺は正真正銘のブラコンだぜ?」
こともなげにのたまうサイドシートの元気をチラ見して、豪はまた一つドーンと大きな難問を抱えた気分になった。
つまり、一番は勇気さん、二番は一平で、俺は三番手ってことかよ。
心の中で豪は愚痴る。
また一つ後退した気分だ。
JR品川駅に着くと、豪は新幹線のホームまで元気についていき、弁当を買って渡した。
別れを惜しむ間もあらばこそ、「じゃあな」と軽く手をふって、元気は新幹線の中に消えた。
元気を乗せた新幹線がホームを発ってしばらくぼんやりたたんずんでいたが、仕事のスケジュールが二週間も詰まっていて、身動き取れぬ自分を呪いながら、豪はまた、たまにしか届かない元気の電話を待つ日々に戻っていった。
「くっそー! ちゃっちゃと仕事終わらせて帰るぞ! 元気――――――――っ!」
おわり
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