そんなお前が好きだった100

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 まもなく意見交換が終わり、演奏する側の四人はそれぞれの問題点を取り上げて次の練習までに回収しようということになった。
 寛斗は席の後ろの方で聴いていた響のところにのっそりとやって来て、「俺でいいんかなあ」と呟いた。
「どうした? 自信家のお前らしくないぞ」
「いや、レベルがさ、瀬戸川や志田、違い過ぎね? 瀬戸川、今度のコンクールにかけてるって感じじゃん。俺がぶち壊してる気がしてさ。何か、ほら、一年のあいつ、青山? あいつのが俺よかレベル上じゃね?」
 響はうーん、と口にする。
 確かに青山は技巧的には巧い。
 だが、曲の理解度でいえば、この曲に関わっている時間が長いだけ寛斗の方が高いだろう。
 それに。
 瀬戸川は寛斗と一緒にコンクールに出たいに違いないのだ。
「技巧を取るか、曲の理解度を取るかでいえば、多少下手でもお前の方がいいと思うが」
「ちぇ、多少下手でもって、何だよそれ」
 寛斗は苦笑いする。
「いや、お前、真面目にやってたからうまくはなったぞ? あとは、他のパートの音をよく聴けばいい」
「ふーん」
 見下ろしてくるのはやはり十七歳の顔だ。
「しかし、大丈夫か? こっちとサッカー掛け持ちで」
「俺の体力は半端じゃないんで」
 寛斗はニヤッと笑う。
「それよりさ、井原のヤツ荒川センセと付き合ってるって?」
 避けたい話題を振る寛斗に、響の顔は曇る。
「これで、ガチであんた口説けるよな」

 


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