そんなお前が好きだった101

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 わざと響の耳元で囁いて、寛斗はサッカー部が練習するグラウンドへと走って行った。
「あいつ、まだあんなこと! これでってなんだよ!」
 イラついて響は口にした。
「お先に失礼しまあす」
 やがて口々に声をかけて一年生が出て行くと、眉根を寄せたまま、響はまだ練習を続ける瀬戸川と志田、榎のところへ歩み寄った。
「川口さんがチェロやってみたいんですって」
 瀬戸川が言った。
「やってみるのはいいけど、楽器をどうするかだよな」
 瀬戸川や志田のチェロやヴァイオリンは自前だ。
 準備室には管楽器が主で、弦楽器はない。
「親に頼んでみるって」
「チェロって結構するんじゃないか? 部活でやるだけならどうだろうな」
「川口さん、お母さんがこの街のセレブなんですって。だからモノにならなかったら、チェロは音楽部に寄付するそうですよ?」
 志田が言った。
「太っ腹だな」
 響は笑った。
「週末に買いに行くって言ってました」
「けど、俺は弦楽器の専門じゃないし、やっぱそっちの専門家にも来てもらわないとだめじゃないのか?」
 考え込む響に、「川口さん、自分で教室に行くみたいだから大丈夫です」と瀬戸川が言った。
「私が教えてもらってる先生、紹介しました。それに、部活内なら私ができる限り指導しますよ」
「受験生にそこまで頼めないよ」
 響は瀬戸川の発言に驚いた。
「息抜きも必要だから、毎回じゃなくてもね」
「それに、あたしも少しは役に立つかと思います」
 志田も同じ弦楽器だからと言う。
「何か俺、立つ瀬がないな」


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