そんなお前が好きだった108

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 結婚、か。
 井原も考えているのかな、結婚。
 そうだよな、いい歳だし、出会いがあれば。
 荒川先生とか。
「羨ましそうじゃん、井原。お前も結婚したくなったんだろ?」
 響が考えていたようなことを、カウンターの中の元気がスパッと切り込んだ。
「何で俺が結婚だよ!」
 井原は言葉を荒げた。
「井原は荒川先生と付き合ってるらしい」
 響はさり気に言った
「え、何それ?」
 井原は驚いて響を見つめた。
「学校で噂になってるし。こないだ二人でデートしてたって」
 どうせなら、たったか認めさせれば、俺もすっきりする。
 響は心の中で呟いた。
「元気、そろそろ、東の絵、換えてもいい? こないだ売りつけられたやつに」
 ちょうどその時、紀子が奥から、絵を抱えて出てきた。
「売りつけられたやつ?」
 響が笑いながらすぐ反応した。
「そう。壁の絵、元気がこっち戻ってきた時からだから、三年は経ってるし、本来なら季節ごとに絵も換えるべきだとか言っちゃってさ」
「へえ、どんな絵?」
 響は紀子が絵を大テーブルの上に置いたのを機に席を立った。
「こっちはベネチアの絵、こっちはひまわり」
 八号に描かれたベネチアはゆったりとした海やベネチアの街並みが明るい。
 三号に描かれたのはひまわりで、この店では初めて風景画以外の絵となるが、他の風景画と空気感が同じである。
「いいなあ、これベネチアの匂いがする」


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