そんなお前が好きだった16

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 店では猫グッズの販売もしていて、寛斗がてきぱきとキャリーケースやトイレセット、キャットフードなどをひと揃えまとめてくれた上、朱莉が猫ともども響を車で送ってくれた。
「この子、一歳になります。うちで保護した時はまだ乳飲み子で、段ボールに四匹公園に捨てられてて」
「他の子は皆女の子でもらわれてったんだけど、こいつやんちゃ盛りの雄ででかいから残っちまって。懐っこいんだけどなあ、田吾作」
 一緒についてきた寛斗が後ろでキャリーケースの猫に話しかける。
 食事でもして帰ろうと思っていた響の財布はいきなり結構な出費となったが、思わぬ拾い物をしてしまった割には、この可愛い生き物と暮らすことへの興味が強かった。
 いずれは適当な家を探すつもりだったが、父親にはしばらく家に置いてもらう代わりに食費家賃を入れるということで取引は成立していたものの、猫を飼うことまでは考えていなかった。
「何か困ったことがあったらいつでもご連絡ください!」
 離れへ荷物を運ぶのを手伝ってくれた寛斗は満面の笑顔でそう言い残し、三島姉弟が帰った後、寛斗が初めて会った気がしなかったのは、雰囲気が井原に似ていたかも知れないと響はふと思いあたった。
 ちょうど寛斗と同じ高校二年生の井原は寛斗よりは大人びていた気がするが、笑顔の絶えないやつだった。
 面倒見がよくてお調子者、何でも率先してやる、クラスに一人はいそうなタイプで、男女問わず教員たちにも好感度が高かった。
 何だか、また井原のことを思い出してしまったな。
 などとのんびりしていた響だが、間もなく高校時代の音楽の教師である田村からの一本の電話から響のそれからが怒涛のように決まっていった。
 入院するという田村への心配もあったが、非常勤とはいえいきなり母校の教師に就任した響は、音楽の授業の初日から寛斗と出くわした。
「ウッソー、うちのセンセだったわけ? んなことひとっことも言わなかったじゃん!」
 前任者の田村に紹介された響を見て、でかい図体で前の方に座っていた寛斗は立ち上がって喚いた。
 懐っこかったのは田吾作改め、にゃー助だけでなく、この寛斗も同様だったようだ。
 最初からバカにされないようにとクールに決めたかった響だが、寛斗のお陰で、二年のこのクラスでのキョーちゃん呼ばわりが瞬く間に全校に広まっていた。

 


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